私はキャンバスに油彩で絵を描くのではなく、木製パネルに綿布を貼り、西洋の古典技法である「白亜地」を作っています。
絵を描くための下地を支持体と言うのですが、描き心地が様々なため自分の絵と相性の良い支持体はとても大切だと思います。作家友達は絵を描く前から気合を入れて準備している人が多いです。
入学したての時に教授から白亜地作りのレクチャーを受け、長年同じ方法で作っているのですが、実はこの支持体作りは重労働で日数がかかりとても大変な作業なんです。。。
~~画像に使用道具や、支持体作業工程を載せておきましたのでご覧ください。
一日目:【前に膠塗り】
●木で出来たパネルが反らないため、両面に水を施します。
●膠と言う、動物の骨や皮から出来た接着剤を水で薄め、綿布が張り付きやすいように膜の層を作る。
二日目:【布張り】
●《膠水(膠と水を調合した液体)、重質炭酸カルシウム、チタニウムホワイト、水》を調合しパネルに塗る。上から濡れた綿100%の布を載せ、木べらで皺が出来ないように四方に伸ばす。皺が出来るとひび割れの原因&絵の邪魔になるので、この作業が一番緊張して尚且つ重労働なんです。夏は汗だくで次の日は木べらを持っていた腕が筋肉痛になります(涙)
三日目:【白亜地塗り】
●≪膠水、重タン、チタニウム、水》の調合を1:1の濃い目にし、前日貼った布の上から気泡が出来ないように慎重に塗っていきます。季節によって乾く速度は異なりますが、一時間に一度、乾ききる前にもう一層を重ね塗りします。このタイミングも大切で間違えると亀裂が出来て泣けてきます。
四日目:【研磨】
●乾ききった支持体を、細めのヤスリで研磨します。ぐるぐる回しながら進めて行くと、ムラなく仕上がる気がします。
最後は粉を濡れ雑巾で取り除き、軽く磨いて出来上がり!!
長時間の中腰はそろそろしんどいお年頃ですが、ピカピカに出来た支持体を見るとテンションが上がり、「素敵な作品に繋げるぞ」と制作前から気合が入ります。
油絵で描かれた作品の表面に凹凸がなく、マットな仕上がりになっているのは、この支持体のお陰になります。大変な作業ではありますが、クオリティーに繋がる大切なひと手間なのでこれからも丁寧に続けて行こうと思います。
私の油彩作品を見て頂く際に、絵の下に隠れている支持体を思いだしてもらえたら嬉しい限りです。